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イルカ図鑑

ハシナガイルカ
ハシナガイルカ(嘴長海豚、Stenella longirostris)はクジラ目 ハクジラ亜目 マイルカ科 スジイルカ属に属する小型のイルカである。 世界中の熱帯の海域に棲息する。 和名の「嘴長」(はしなが)は「くちばし」(口吻)が長いことに由来する。 英名の"Spinner Dolphin"(回転イルカ)は、ハシナガイルカがジャンプする際、しばしばスピン(背骨を軸とする方向の回転)しながらジャンプすることに由来する。

ハシナガイルカの体色は、ほぼ濃い灰色であるが、喉、背、尾びれのあたりなどは、より濃い灰色である。 腹部はクリームがかった白であることが一般的であるが、個体による差がかなり大きい。 口吻は細長く、先端は黒っぽい。 鰭(ひれ)も同程度のサイズの他のイルカと比較すると長い。 背びれは垂直に立っており、東太平洋に棲息する年配の個体では、前方に傾いていることもある。 しかし、ハシナガイルカは全クジラ目の中でももっとも多様であると言ってもよく、以上の説明も十分ではない。成体の体長は130cmから235cm程度、体重は25kgから90kg程度である。 妊娠期間は10か月である。 メスは4年から7年で、オスは7年から10年で、それぞれ性成熟する。 寿命は不明である。

ハシナガイルカは数頭の群をなすこともあるし、数千頭もの巨大な群 (school) で行動することもある。 英語では"Spinner Dolphin"(回転イルカ)と呼ばれることからもわかるように、ハシナガイルカはスピンしながらジャンプするというアクロバティックな行動を行う。 なぜジャンプの際にスピンするのかはわかっていない。 仮説であるが、スピンしながらジャンプすることで海中に大きな泡を作り、それが巨大な群の中での反響定位の目標物となる、という説がある。 あるいは単なるお遊びであるという可能性も高い。 短時間で続けざまに、少なくとも14回ものスピンジャンプを行う様子も複数回観測されている。 船の船首波を跳ぶこともよくある。 大西洋では、同じようにスピンするクライメンイルカと見間違えやすいが、クライメンイルカはハシナガイルカほどにはスピンジャンプを行わない。 またマダライルカとも特徴が似通っている。

ハシナガイルカは世界中の熱帯の遠洋に棲息する。 多くは南北回帰線の間に棲息する。 広播性を有するとされるが、粗い言い方をすれば、亜種ごとに各地域に分かれて棲息しているようである。 全棲息数は不明である。 東太平洋においては、魚網による混獲が原因で激減したとされる(本記事の「人間との関わり」参照)が、まだ一般的によく見られる種である。

ハンドウイルカ
ハンドウイルカ(半道海豚、Tursiops truncatus (Montagu, 1821))はクジラ目ハクジラ亜目マイルカ科ハンドウイルカ属に属するイルカである。一般的にはバンドウイルカと呼ばれることも多い。最も良く知られたイルカの一つであり、北極圏および南極を除く世界中の海に生息する。「イルカ」と聞いた時にまず思い浮かべるのが、このハンドウイルカであろう。

ハンドウイルカの主食は小さい魚類であるが、イカなどの頭足類や、カニなどの甲殻類も食べる。 歯は鋭く尖っており、餌となる生物を捕獲するには適しているが、咀嚼(そしゃく)には適さない。 餌となる魚類の群に出会った場合には、ハンドウイルカは団体で行動して、捕食活動を行う。 単体の場合には、海底近くの生物を捕食することも多い。 尾びれを用いて魚を殴打して気絶させた後でその魚を食べることもある。

ハンドウイルカは餌を探すために反響定位(エコーロケーション)を行う。 潜水艦のソナーや魚群探知機などと同様に音波を発生し、その反射音により物体の位置や距離の測定を行う。 発生するクリック音は、メロンと呼ばれる前頭部の器官によって屈折させられ、身体に対して正面の方向に集中して発せられる。 ハンドウイルカの耳は眼のすぐ後(尾びれ側)にあり、外から見ると穴が開いているのだが、音は外耳孔ではなく下顎を通して内耳に伝わり、音として認識される。 探知している対象物に近づくと、反射音が大きくなるが、ハンドウイルカは発生する音波の大きさを調整して対応する。 一方、コウモリの反響定位やソナーの場合だと、反響音が大きくなる状況では、受信側の感度を下げて調整している。

マダライルカ
マダライルカ(斑海豚、Stenella attenuata)はクジラ目ハクジラ亜目マイルカ科スジイルカ属に属するイルカである。 世界中の温帯から熱帯の海域に棲息する。 アラリイルカとも呼ばれる。

マダライルカは、1846年、Grayによって新種として報告された。 Grayの最初の分類では、現在では別の種に分類されているタイセイヨウマダライルカも同じ種とされていた。 属名Stenellaも種小名attenuataもラテン語の「細い」、「薄い」といった語に由来する。 1998年のRiceの研究によると三つの亜種が存在する。 三つのうちの二つの亜種には正式な名前が付けられていない。

マダライルカの大きさや体色は生息域によってかなり異なる。 特に遠洋に棲息するものと沿岸に棲息するものの違いが大きく、沿岸に棲息する個体の方が大きく、模様がより斑(まだら)である。 (遠洋と沿岸の差異は大きく、上述のように東太平洋だけでも二つの亜種(S. a. AとS. a. graffmani)に分けられる) 成体では斑模様が一番わかりやすい特徴であるが、若い個体は一般的にはもっと一様な体色であるため、ハンドウイルカと混同しやすい。 メキシコ湾周辺に棲息する個体は、成体でも斑模様がほとんどない。 大西洋においては、タイセイヨウマダライルカと混同しやすい。

大雑把に言うと、マダライルカの口吻は細長い。 上下の顎は濃い灰色であるが、唇の部分が白くなっている。 喉や腹部は白あるいは淡い灰色で、斑は少ない。 横腹と背は3色から成り、腹側が一番明るい灰色、背は濃い灰色で、境界には灰色の帯状の模様がある。 長く湾曲した背びれは背と同じ色である。 生まれた直後の体長は80cmから90cmである。 成体の体長は1.6mから2.5m程度、体重は120kg程度である。 雌は10年、雄は12年でそれぞれ性成熟する。 寿命はおよそ40年である。

マダライルカは世界中の温帯、亜熱帯、熱帯の海域、大雑把に言うと北緯40度から南緯40度の海域に棲息する。 全生息数はおよそ300万頭以上であり、クジラ目の生物としてはハンドウイルカに次いで2番目に多い。 うち、東太平洋に200万頭が生息する。 しかし、1950年代には700万頭が棲息していたと見られるので、半分以下に減少したことになる。浅く、25℃以上の暖かい海域での生息数が一番多い。 また、温度差の大きい海域も好む。